受精とは、精子が卵細胞のまわりの卵丘細胞をはねのけて卵の殻(透明帯)に取り付き、これを酵素で溶かして卵細胞の中に入り込み、卵細胞を活性化して卵細胞に受精の準備をさせます。
それと共に精子も卵細胞の力を借りて受精の準備を完了し卵細胞の核と精子の核が融合しここに受精が成立します。
精液中の精子の数が20x106以上あり運動率も50%以上で奇形率も低く一見、正常所見の精液でも時として通常の体外受精で受精が成立しないことがあります。これは受精の過程のどこかが正常に働かなかったことが考えられ、これを解決する方法として顕微授精が用いられます。
精液所見が悪い場合は受精の過程が最初から起こらないことが想像できますので、体外受精を飛ばして顕微授精で治療を開始します。
顕微授精と体外受精の違いは受精の過程を人工的にするか否かです。
体外受精では卵子の入った培養液中に元気のいい精子を入れるとその後は自然に受精の過程は進行します。
顕微授精はまず卵細胞のまわりの卵丘細胞を酵素で取り除き卵細胞を裸の状態にします。そこで図1のような微動で動く装置を付けた倒立顕微鏡に卵子を置き図2のように卵子を保持します。
精子はマイクロピペットに1匹吸い取って卵子のあるステージにマイクロピペットを移動し、マイクロピペットで透明帯を突き抜けて卵細胞内に精子を注入します。その後の受精の過程は卵子と精子の相互作用に任せます。
体外受精では図3、4だけの装置で十分ですが顕微授精の場合は図1のような装置が必要で、これを操作するのは非常に高度な技術が必要となってきます。
当院ではエンブリオジストがこの技術を取得しています。