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不妊治療INFERTILITY TREATMENT

不妊治療の流れ

1.タイミング療法

排卵期に夫婦関係をもつと妊娠に結びつく事が出来ます。
排卵の兆候を見つける事は可能です。まず、卵胞が成熟しますと頚管粘液(少し粘り気のある、水っぽいおりもの)が増えてきます。しばらくすると、尿で調べる排卵検査薬が陽性に出ます。この時経腟超音波で卵巣を観察しますと2cm程の大きくなった卵胞が見え、子宮内膜も8mm以上に厚くなっております。ホルモン検査では卵胞の成熟を示す女性ホルモン値が上昇しており、排卵の兆候を示す黄体化ホルモンが急上昇しています。この時期に夫婦関係をもてば、腟内に射精された精子は、頚管粘液に乗り移り、子宮内を通過し、卵管内で卵子を待っています。このホルモンの急激な分泌後40時間の経過で卵胞が破裂し排卵となり、順調にいけば卵管内に取り込まれここで受精が起こり順調にいけば妊娠へと進みます。
妊娠のための性交渉は、多すぎても少なすぎてもいけません。排卵期に毎日しても精子の産生が間に合わず、排卵日だけの月に1回では精子が古くなり受精能力が減少します。性交渉の回数は、頚管粘液、水っぽいおりものが増えて来た時、排卵検査薬で陽性に出た時、その数日後の3回程で充分でしょう。"

2.排卵誘発法

排卵障害がある場合に排卵誘発がなされます。 排卵障害とは、基礎体温で低温相が長く、超音波で卵巣を見ても卵胞の発育が進まず、なかなか排卵が起こらない場合です。
原因は脳下垂体からの卵巣を刺激するホルモンの分泌が少ない場合と、脳下垂体からのホルモンの刺激があっても卵巣の卵胞の反応が悪い場合があります。
排卵誘発法には排卵誘発剤の内服と注射の2通りの方法があります。
飲み薬による卵巣刺激は比較的緩やかな方法であまり副作用はありません。内服薬を生理3~5日目から5~7日間内服しその後超音波などで卵胞の発育を観察します。
この方法で排卵が起こらない場合はHMG療法に切り替えます。注射による排卵誘発は効果も大きいですが副作用が伴いますので慎重に使用します。

排卵誘発法

卵胞が充分に発育したところで、排卵させるためにHCGの注射をします。この注射後40時間で排卵となります。多くの卵胞が発育しすぎると卵巣過剰刺激症候群になることがありますが、それを防ぐにはHMGの量を少なく回数を増やせば単一排卵に結びつきます。

3.人工授精

人工授精は特に異常はないがなかなか妊娠しない原因不明不妊、性交後試験が悪い場合、精液検査が悪い場合、性交が上手にできなく射精困難な場合などに実施されます。
方法は基礎体温、超音波などで排卵が近いことを確かめ人工授精の日を排卵直前に設定します。マスターベーションで精液を採取、精液は培養液を用いて洗浄、濃縮(0.5ml)します。
注射器に精液注入用の細いチュ−ブを付け濃縮精子を子宮頚管から子宮内にそっと注入し終了します。このように多くの精子を子宮から卵管に送り込むことによって妊娠が得られます。しかし実際の妊娠率はせいぜい1割程度で余り成績の良いものではありません。実施回数も最大5~6回まででそれ以上続けても妊娠の可能性は少なく次の不妊治療にステップアップすべきでしょう。
2022年4月から人工授精も保険適用となりました。年齢・回数制限はありません。人工授精の費用は5,460円+診察料、薬剤料、注射料などです。

精液を処理し、子宮内に精子を注入

4.治療のステップアップ

結婚してもなかなか妊娠が成立しない場合にはタイミング指導、排卵誘発、人工授精などの治療をします。特に原因がない場合でも、妊娠しない時があります。不妊検査で異常がないのに妊娠しないのは納得できない方もおられると思います。
これは、排卵時、卵子が卵管内にピックアップされたかどうか等は検査できませんし、また受精できているかどうかも不明です。
そこでこのような場合には、治療をステップアップして体外受精へと進みます。

5.採卵日の決定

経膣超音波で、卵の成熟具合をチェックし、次席卵胞が18mm以上になれば、採卵日を決定します。都合の悪い日時があれば予め排卵誘発期間に知らせておいてください.採卵日が決まりますと胚培養士から、スプレキュアの終了日時、hCGの注射や、採卵前日の絶飲食について、また、採卵日の来院時間、採卵時の麻酔方法についてなどの説明をします。

6.hCGの注射

hCGを注射する事により人為的にLHサージを起こし、排卵を促します。hCGの筋肉注射後、40時間で排卵するといわれています。その直前の36時間後に採卵します。採卵前々日の午後9~11時30分にhCG5000単位の注射をし、その2日後の朝9~11時から採卵を行います。採卵前日はなにもありませんので自宅で過ごします。

7.採卵当日

採卵前日の就寝時以降、当日も何も食べたり飲んだりしないようにしてください。(コップ1杯程度の飲水は可能です)採卵当日は、血中酸素濃度を調べるモニターを人差し指に装着しますので、マニキュアやネイルは外し、化粧も控えめにし、コンタクトレンズは外しておいてください。受付をされた後トイレを済ませてお待ちください。

8.膣洗浄

超音波で卵胞を確認後ヒーリングルームにて術衣に着替えした後に、採卵室に入室し膣洗浄をします.これは採卵時の感染を防ぐためで、消毒液などは卵に障害が予想されますので、膣内を温かい生理食塩水を流しながら、綿球でしっかりと洗います。膣を器具で広げての操作ですので違和感というか、なんとも言えない痛いような気持ち悪いような感覚があるようですが、少し我慢してください。

9.採卵時の麻酔

痛みに対する反応、痛みへの価値観は人それぞれです。採卵時の麻酔を希望により決めることもできます。まず、採卵室入室前に肛門から痛み止めの座薬を挿入します。膣洗浄の後に膣の一番奥のところ,穿刺針を挿入する場所に局所麻酔剤を注入します。浸潤麻酔で痛みを嘉永減します。採卵数が少ないとこの麻酔で充分です。

卵胞が多く発育しておれば穿刺の回数が増えます。この痛みを取るために軽い静脈麻酔剤を使用します。この場合は事前に血管確保し点滴をします。採卵室入室後にそのルートから麻酔薬を注入します。麻酔中は血圧、脈拍、血中酸素濃度、意識状態、呼吸を観察し麻酔中の安全を確保します。一人の看護師は患者様の頭側で常に状態を観察いたします。静脈麻酔の方は、完全に麻酔から覚めるまで安静を保ち、帰りの車の運転は出来ません。

経膣超音波プローベに穿刺ガイドを清潔に装着し膣内に挿入し成熟卵胞のある 卵巣に押し当てますと、経膣超音波プローベのすぐそこに成熟卵胞が来ます、細い卵胞穿刺針で慎重に卵胞を穿刺し卵胞液を吸引し採卵します。採卵針の太さは細いほど体への負担は少ないのですが、卵は狭いところを通ってくるため、卵が変形したり 顆粒膜細胞がはがれたり、卵が破損してしまう可能性が ありますので最適な太さの 20ゲージを使用しております。採卵された卵胞液は培養室の実体顕微鏡で検卵し、採取された卵子は直ちに培養液の入ったシャーレに移され、培養器(混合ガス低酸素培養器)の中に保管されます。いろいろ努力しても卵子が採取できない場合があります。これはhCG注射から排卵までの時間が通常より短くなっていたり、卵胞内の卵細胞に何らかの変化が起こってしまった場合です.採卵時間は卵胞の数が数個の場合は数分で済みますが、 多くの卵があったり,穿刺しにくい場所に卵胞が位置していると経膣超音波プローベの位置を変え子宮、膀胱、腸管、血管などをさけて慎重に穿刺しますので少し時間がかかります。

9.採卵後

採卵針の通り道からの出血の状態をみます。穿刺に伴う膣壁や卵巣からの出血は自然止血します。出血がある場合はガーゼや綿球を膣に入れて圧迫をします。移動用のベッドで安静室に戻ります。数時間の安静後、再度経膣超音波にて出血の有無を観察します。静脈麻酔は完全に麻酔が覚めてからにします。採卵された卵子の数や精子の所見について、医師から説明があります。胚移植がある場合は黄体ホルモン剤(内服と膣錠)が処方されます。また、採卵後の感染防止のために抗生剤も処方されます。

10.採卵のリスク

出血に関しては内診、超音波で、出血の有無を確認し血圧や心拍の変動、痛みの状態などを観察し、出血が多い場合は入院安静が必要な場合もあります。臓器の損傷に関しては、慎重に超音波画像を見ながら採卵針を操作することにより防ぎます。採卵時の静脈麻酔による呼吸循環障害です。静脈麻酔は身体への負担も大きく、採卵後も安静時間が長く、局所麻酔や坐薬に比べリスクは高くなります。採卵後に感染が起こる事も予想されますが十分な膣洗浄と抗生剤で防止して おります。卵巣過剰刺激症候群が発生する事があります。排卵誘発剤を使用で、卵巣が過剰に反応し採卵後も卵巣が腫大した状態になり腹痛を訴えることがあり入院が必要となりますが,胚移植をしなければ次第に収まります。