胚移植の時期は、培養3日目で、8細胞期胚を1~2個を細くやわらかい子宮内移植カテーテル内に少量の培養液と伴に胚を吸引し、超音波で観察しながら子宮内膜へそっと戻します。
数日後、胚は子宮内膜にもぐりこみ、そこで分裂を開始すれば着床が成り立ち妊娠へと結びつきます。
多くの胚が順調な発育を示した場合には、ガラス化法で余剰胚を凍結保存し次回に備えます。
3日目に8細胞期胚を移植してもなかなか妊娠に結びつかない場合には,胚を5日まで追加培養し,胚盤胞に育った胚を移植します。この方法で移植しますと、8細胞期胚と比べて妊娠率が上昇します。しかし、リスクもあります。8細胞期胚から胚盤胞まで育つ確率が低い事です。胚盤胞まで育たなければその周期の移植は無くなります。また、1%の確率で1卵性双胎が発生しハイリスク妊娠となります。
3日目に8細胞期胚を1個移植し、5日目に胚盤胞を1個移植する方法です。2回胚移植をすることにより妊娠の確率が上昇します。
グレード1はきれいに胚が分裂していて一番妊娠率が良く、グレード2、3となるにつれてフラグメントが出現し、割球の大小不同があり妊娠率が少しずつ悪くなります。グレード 4、5では妊娠は非常に稀となります。
体外受精周期では点鼻薬を使用して卵巣機能を抑制しているために黄体ホルモンの分泌が少なくなっています.黄体ホルモンを内服薬、腟座薬、注射等によって補い子宮内膜を胚の着床に備えて分泌化させます.また,着床後は子宮内環境を整え胚の発育を促進します。
平成21年の日本産科婦人科学会の全国調査では、採卵回数は約6万回で、移植回数は2万8千回、妊娠数は6,818例で、移植当たりの妊娠率は24.3%であり、出産数は4,753例で、移植当たりの生産率は16.9%でありました。(日本産科婦人科学会)
年齢別の妊娠率では、20歳代が一番良く4割、 30歳代が3割、40歳代は2割でした。
採卵後受精し2細胞から4細胞、8細胞へと順調に発育し良好胚ができればその中の1個を選び子宮の内に注入する、胚移植を行ます。移植日時は採卵時にお知らせします。
昼食後は排尿せずに膀胱に尿を溜めた状態で来院します。これはお腹の上から膀胱を透して子宮を観察するためです。
胚移植は培養室横の採卵室でします。採卵時と同様に膣洗浄で膣を清潔にし、同時に、培養士が培養器から胚の入った容器を取り出し、移植専用の柔らかいカテーテルを用いて容器から胚と少量の培養液と一緒に吸い上げ、採卵室で待機している移植担当医に手渡します。移植医は経腹超音波を見ながら子宮内膜を傷つけないよう慎重にカテーテルをすすめて、もっとも着床しやすい場所である子宮底から1〜2cmのところに胚を確実に移植します。
移植後すぐ起き上がっても1日間寝たきりでも妊娠率は変わりません。そのため 移植後は少し安静にしていただき帰宅となります。ご自宅に帰られた後は、過度な運動は避けていただければ、通常の生活をしていただいて構いません。
新鮮胚移植か凍結胚移植か、
分割胚移植か胚盤胞移植かの選択がありそれぞれに利点欠点があります。
採卵の周期に胚移植を行う方法で、短期間に治療が終了し負担が少ない利点はありますが、子宮内膜が薄かったり逆に厚すぎたり、卵巣過剰刺激症候群の恐れがある時は、胚は凍結となります
採卵で得られた胚を凍結保存し、移植周期に合わせて子宮内膜やホルモンの状態を十分整えてから移植を行っているため、妊娠率が高く、流産率が低いのが特徴です。しかし、凍結、融解の作業にコストがかかり、凍結、融解の過程で胚が変性する恐れがある事が欠点です。
採卵から3日後に行う分割胚移植(ET)と5日後に行う胚盤胞移植(BT)の比較では、BTはより長期に培養するためにETに比べ良好胚の選別が可能であり、子宮内膜の蠕動運動が低下し、子宮収縮頻度は低下し、胚と子宮の同期が取れている状態での移植なのでより着床に適した時期になり、着床間近の胚盤胞を移植することで 妊娠率が上昇し、子宮外妊娠率が低下することが報告されています。
しかし,長期間の体外培養は胚にとって必ずしも最適な環境だとは限らず、費用もかかり、胚盤胞にならなかった場合、治療が出来なくなる事があります。また、1個移植したにもかかわらず一絨毛膜性双胎の発生が報告されています。
着床障害とは良好胚を複数回移植しても妊娠が成立しない場合を言います。
着床は、胚と子宮内膜との調和のとれた相互作用が複雑に絡み合って成立しています。着床障害の原因は多岐にわたり、原因の特定は簡単なものではありません。
着床障害の原因として考えられることは
などがあげられます。
着床障害の検査としては